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見上げた朔の頭上、高く高く、白い月が光っている。
無言の朔が、スッと右手を伸ばすと、
望の長い髪越しに、左頬を包んだ。
赤い目をした望が、朔を見上げる。
「…撃たれないから、泣き止め。」
疑いの眼差しで、眉間に皺を寄せる。
「あんたに泣かれると……なんか、困る。」
「…え…」
朔は親指で、望の頬に伝う涙をクイッと拭くと、
「あんたは、泣いてるより…」
望は朔を見上げる。
「怒って、ピーピー言っていた方がいい。」
「…ピーピーって。」
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