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「いや…隠し事なんか…」
「ないの?」
千佳が尋問官のように、望に詰め寄る。
健人の視線が痛い
「望っ」
「千佳、やめろ。困ってるだろ、望。」
健人の言葉に、千佳はキッと健人を見上げると、
「健人は望の味方なんだね。やっぱり。」
「は?」
険悪な空気がそこを支配し始める。
「だって健人は望の事…」
「千佳。」
健人が千佳の言葉を遮る。
「最低だぞ。お前。」
訳が分からない望は2人を交互に見つめる。
泣き出しそうな瞳で健人を見つめる千佳と、
あまり怒った顔をみない健人が、千佳を睨んでいる。
ガタンッ
勢いよく、千佳は立ち上がると、
「もういいっ!2人とも最悪っ」
教室に残っていた数人が、千佳の声に振り返った。
「千佳っ」
教室を出て行く千佳を追い掛けようと望が立ち上がると、
「俺が行く。」
健人が望の肩をポンポンと叩いて、フッと笑いかけた。
心配ないからっていう、健人の笑顔。
追いかけていく健人の背中を見つめながら、望は胸の中の不安という渦に押し潰されそうだった。
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