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「…あの…」
「適当にやってて。私、店の準備あるから。」
まことは、パチンと電気スタンドをつけると、部屋がオレンジ色に染まった。
「あのっ」
「勝手にキッチン使っていいから。」
テキパキと邪魔な物を片付けながら、望に指示していく。
「あのっ!」
「えっ?あ、何?」
「…まことさんて…アイツの…彼女さんですか?」
目を丸くしたまことは、次の瞬間、豪快に笑い飛ばした。
「ハハハッ!!やぁだ、真面目な顔して聞くからーっ」
お腹を抱えて、笑うまことが不思議で、望は首を傾げる。
「彼女ねぇー。朔ちゃんには、彼女って相手、いーっぱいいると思うけど?」
「え…」
クスクス笑いながら、まことは望の顔を覗き込むと、
「朔ちゃんも悪い奴だねぇ。こぉんな、まだなーんにも知らないガキを客にしちゃうなんて。」
「客?」
「そ。だって、朔ちゃんはホストの客としかデートしないし、キスもしないし…」
まことは、固まったままでいる望の耳に顔を寄せると、
「それに、客としか寝ないし。」
意地悪そうな笑顔で、望の顔を見つめるまことは、「ま、私はそれ以前の問題だけど。」と付け加えて、扉のドアノブを回した。
「あ…でも1人だけいたかな。客じゃない“彼女”」
「…え…」
「これ以上聞きたいなら、下に来て、開店の準備手伝いな。」
まことはニヤっと笑うと、パタンと扉を閉めた。
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