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やめとけばいいのに
と、頭の中で誰かが言っていた。
気付かないフリをして、望は鉄骨の階段を下り、誰もいないフロアを見渡した。
ガチャン
「あ、やっぱり来た。」
カウンターからグラスを手にまことが顔を出すと、ニヤニヤと口を歪ませながら、
「じゃあ、まずテーブル拭いてきて。」
投げられた布巾をなんとか受け取ると、近くのテーブルから布巾を滑らせ始めた。
「と言うかさー」
「え?」
「あんたは、朔ちゃんの何なの?」
グラスを布巾でキュッキュッと拭き上げながら、まことは望に鋭い視線を送る。
何なの…って…
なんだろ。
「やっぱり、客なわけ?」
客…
どちらかと…アイツが客?
「あんた、お嬢様なんだ。」
「はい?」
まことは、人の話しを聞かないでどんどん先に進んで行く、と言うのがどうやら特技らしい。
望の返事を待たずに、まことの話はどんどん完結していく。
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