nine.

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なんたる偶然… アイツの唯一の“彼女”が、今私の目の前でお酒を配っている。 なんで、会うかな。 と言うか、なんでこのタイミング? しかも、メチャメチャ可愛いし… ふわっとしてて、 クルッとしてて、 ニコッとしてて… 私とは、正反対! 「なぁに、睨んでんの?」 「まことさん…」 まことは、カウンターの端っこにちょこんと座る望の前にオレンジジュースを置いた。 「べ、別に睨んでませんっ!!」 望はストローをくわえて、慌ててそれを吸った。 「ま、勝ち目ないでしょ?可愛いし、愛想もあるし、そりゃ天下の朔ちゃんも落ちるわな。」 ニコニコとお客さんと談笑する繭が目に入る。 モヤモヤする… 彼女だった。だよね? 今は… 「これで、分かった?女子高校生さん。」 「え?」 「ここに来る事も、朔ちゃんの事を買う事も、あんたにはまだ早いってこと。」 冷ややかに言い放つまことの目は、まったく望を受け入れていない目をしていた。 「おうちに帰って、あんたに合うお坊ちゃんと遊んでなさいね?お嬢様。」 言い返せなかった… 悔しかったけど… 何を言っても、 私はまだ、子供だった。 「あれ?店長さん…さっきの美人な子は…?」 トレイをカウンターに置くと、繭は望の姿を探した。 「ん?あー帰った。身の程をわきまえたのよ。」 「え?」 まことは、繭にカクテルを差し出すと、 「あそこのお客さん。」 お酒を運ぶ繭の後ろ姿を見つめながら、ポツリと呟いた。 「…ほんと、偶然て怖いわね。」
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