nine.

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朔は扉を閉めると、頭をガシガシかいて溜め息をついた。 「…朔ちゃん?」 まことは朔の様子を伺うように、声をかけると、 「なんで、相原がいるんだ。」 「だから偶然よ、偶然っ!涼太が助っ人を連れてきたって言うから…そしたら相原さんだったのよっ!」 目を細める朔は、ソファにドサッと座ると、 「じゃあ、アイツは?」 「ア、アイツって?」 しらばっくれるように、目をそらすまことを睨みつけると、 「うそよ、ウソウソ!…帰っちゃったわよ?」 「いつ。」 「えーと…10分くらい前かな…」 口を尖らせ、目を泳いがせるまことに、 「なんで、帰った。」 「そーんなこと、私が知るわけ…」 「あぁ?」 「下にいたのよ。…で、相原さんが来て…」 「なんで、相原が関係あんだよ。」 「んもぅ、鈍感ね。」 どさくさに紛れて腕を絡めようと寄ってくるまことをかわすと、 「…お前、なんか余計な事いったのか。」 口笛を吹いているような仕草をして、しらを切るまことを睨みつける。 「うわっ…朔ちゃん、こわぁい…」 顔を引きつらせるまことに、 「なんで、そもそもアイツが下に行くんだよ。」 「…あの子が、自分の意志で来たのよっ」 朔は大きく溜め息を吐き出すと、ポケットから煙草を取り出し、それをくわえて火をつけた。 「…ちっ」 舌打ちをしながら、朔は立ち上がると、出口に向かって歩き出した。 「さ、朔ちゃん?あの子の事追いかけるの!?」 不機嫌MAXの顔で、片手を上に上げると、 「これ。どうすんだよ。」 朔の手には、スクールバッグが握られていた。 再び舌打ちをしてから、ドアノブをひねると、外へ出て行った。 「…まったく…。あんなガキがいいわけ?」 まことはボソッと呟きながら、階下から聞こえるバンドの音楽に耳を傾けた。 .
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