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「…え…」
「ほら、帰るぞ。」
ニッと笑って、朔は足元にあった望のスクールバッグを肩に担いだ。
あ…
私には…そんな価値もないし…
…そんな存在じゃないって事…
数歩先に行く、朔の背中を見つめる。
すれ違う人が、キラキラした瞳で朔を振り返ってキャッキャッと話し始める。
朔は気にも止めず、足も止めずズンズン前へ進む。
望は口を一文字に結ぶとふーっと息を吐いた。
きっとこんなことは日常茶飯事
女の子にキャーキャー言われるのも
さらっと、キスをかわすのも…
余裕も余裕で、
単なる毎日
余裕な表情で、
何ともない顔で、
…なんか、凄く、
…悔しいっ
タッ……
朔に向かって駆け出す。
朔の肩に手を置いて、
少し驚いた顔で、肩に置かれた望の小さな手から顔に目線を移す。
背伸びをした望は、
ぎこちないキスを
朔の唇に落とした。
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