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「望ちゃんっ!」
「えっ!!」
野上に呼ばれた声に、ハッとして顔をあげると目の前には手のひらと、顔をヒクヒクとひきつらせている男。
それもかなり強面の。
望が驚いて目を見開いていると、
「望ちゃんっティッシュ!ティッシュ!」
「えっ!あっ…」
ザザザ…
「あっ」
カゴから大量のティッシュが零れ落ち、男の靴の上に散らばった。
「わっ…す、すみませんっ」
バタバタと野上は望に駆け寄り、ティッシュを一緒に拾い始めた。
「…あんた。」
頭上から振って来た声の主は、冷や汗をかきながらティッシュを拾う望の前にしゃがみ込むと、
「可愛い顔してんね。」
クイっと顎を指で持ち上げられ、望は無理やり上を向かせられる。
固まる望に、
「フッ…高く売れそう。」
「若っ!」
バタバタと近付いて来た黒い集団に取り囲まれると、
「てめぇっ何やってんだよっ!」
罵声を上げてくる強面の男に驚き、野上は望の後ろに隠れた。
“若”と呼ばれた男は片手を上げると、黒い集団は一気に静かになった。
スッと伸ばしてくる腕に、望は体を強ばらせる。
「一個、もらってくよ。」
ティッシュを拾い上げた右手の甲に、チラッと見えたのは、花びらのような模様。
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