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桜…
満月に、散る桜を泳ぐ龍。
女は男の整った筋肉に描かれた、彩りの墨に体を硬直させた。
男は素早くTシャツを下ろすと、
「…もう、傷はねぇよ。」
顔だけを横に向けると、反応がない女にチラリと視線を送った。
目をパチパチと瞬きをさせ、落ち着きないように視線を泳がせる女は、木箱の蓋をパタンッと勢いよく閉め、ガタンと立ち上がると、
一瞬立ち尽くした後、扉に小走りに駆け寄った。
ドアノブに手をかけた女は、一瞬振り返りそうな素振りをした後、
そのまま扉の中へと吸い込まれていった。
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