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「着きました。」
竹内の静かな声。
「はぁ・・・」
またあの女に会うのかと思うとため息がこらえ切れない。
「終わり次第連絡する。」
「かしこまりました。」
早くこの話を終わらせるべく俺は店の扉を開く。
入った瞬間、主張するように香る彼女の香り。
あの独特な苦手な香り。
「お待たせしました。お話というのは?」
俺は彼女を見つけ、席に着くなり話を切り出す。
これはビジネスだ。
「いきなりですのね。」
と、笑う西条瑠璃子。
他の男から見ればその笑顔は魅力的なのだろうか?
「それがここに来た目的ですから。」
注文をとりに来た店員にすぐ帰るからと断る。
それが失礼なことだとは重々承知の上だ。
が、話す時間以外を共にしたくない。
「婚約解消を解消してください。」
予想していた言葉に俺は少し笑う。
心の中での話。
「無理です。」
俺の即答を予想していたのだろう。
彼女は不敵に笑う。
「恋人がいるからですか?」
「そうです。」
「では別れてください。」
彼女の言葉に俺はピクリと反応する。
「なぜ?」
自分が思っていたより大分感情が出てしまった。
「クスクス・・・・雅臣さんもそんな表情するんですね。」
のん気な言葉。
俺の言葉への返事ではない言葉。
イライラする。
まるで彼女のリズム。
「それが彼女のためじゃないですか?彼女が傷つく前に。」
「まるであなたの話どおりになるような言い方ですね。」
そう。
そんな感じ。
まるでそうなることを疑っていないような彼女の表情と言葉。
嫌な予感しかしない。
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