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店を出ろ。
そして下へ降りろと俺に向かって顎で示して、当の水城は俺に向けるのとは全く違った柔らかい声音で店の奥にいた仕事仲間に声を掛ける。
「葵、ちょっと出ても良い?
直ぐ戻るから」
「おー。
店長来る前に戻れよー」
そして水城の言葉に、店の奥からちらりと顔だけを覗かせて答える仕事仲間。
何はともあれ、やっとこれで春と連絡が取れると席を立って水城の後を着いて。
葵と呼ばれた彼に仕事の邪魔をして申し訳無いとの意味も込めて軽く会釈すると、向こうも言葉無く頭を下げてまた店の奥に消えた。
「はーやーくー、律」
結構と俺好みの可愛い顔してたな、なんて。
彼の姿の見えなくなった向こう側をぼぉっと眺めて余計な事を考えていると、焦れて苛ついた水城の声が店の入口辺りから俺を急かす。
「あぁ、悪ぃ」
かろん-----。
扉を開けるとドアベルがまろい音をさせて。
「大体さぁ…」
また、水城が一旦は閉じて引き結んだ口を開いた。
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