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別に協力してやるつもりで春に連絡する訳じゃない。
そう前置いて、並んで階段を下りる水城が俺に刺々しい言葉を投げ掛けてくる。
元々は春の為だったんだ。
俺が俺たる事は分かっていた。
けれど春だって子供じゃない、一度きりの割り切った関係の後は、自分の様にマイノリティを語れる友人程度になってくれればと思ったのに。
中途半端に春にハマった俺の所為だ。
兄貴兼親友を傷つけて、この落し前はどうしてくれる。
春も春だ、この男と寝ても付き合うなとあれ程言ったのに。
「あーっ!
もーほんっと律ムカつく!」
「そりゃぁ悪かったな。
お前はそんなに俺が嫌いなのか」
「嫌ーい。
でも体は好き」
「最低だな、俺等」
「律なんかと一緒にすんな。
てゆうか律ムカつく」
自分だって俺と似た様な事ばかりしている癖に、と水城の事を揶揄してやると、階段を降りきった所で前を行くソイツがくるりと後ろを振り向いて、べー、っと舌を出して見せる。
「てゆーかさぁ」
「なんだよ」
「見てただろ、さっき。
葵の事」
「は?」
だから、なんだ?
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