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「はぁ!?実家!?」
「だってさ」
何気無く。
且、にこやかに春との会話を終わらせた水城がぱくん、と携帯を閉じて言った。
「実家…」
「そ、実家。地元。Ok?」
実家があったのか。
帰る所なんて無いって言っていたのに。
何故そんな嘘を?
否、人にはそれぞれ事情があって。
だからきっと、春は…。
とにかく今すぐ行きたいのだとまくし立て、春の実家は何処なのかと詳しく尋ねる俺に、水城が至って普通の態度な事を今更ながら不思議に思う。
事は俺の事情とは言え、春にしてみれば命に関わる一大事。
たった一度の機会を逃せば二度と会えないかも知れないのに、なんだ?
水城のこの落ち着き払った態度は。
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