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しかし、けれど。
もしかしたら春は近親者にしか言っていないのかも知れない。
それか、俺にだけ。
帰る所が無いと言ったのはきっと、帰るに帰れない何らかの事情で家を出ていたからで。
けれど死期が近付いた今、急に生まれ育った場所が恋しくなったのだろう。
だから…。
事情を知らなさそうな水城にもうこれ以上の用は無いと形ばかりの礼を言い、今度は店の開いている時間に来るから、と別れを告げた。
知らないのなら余計な事は言わない方が良い。
誰にどんな事を言うか決めるのは春なのだ。
「そうだ。律」
「なんだ?」
「…いや。やっぱり良いや」
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