冷たき玻璃(ハリ)の朝

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` ツバメはこれを、どうしたらいいか分からず正直に伝えた。 サトウは再度手元のそれに目を落とした。 ライトグリーンと深緑のツートンに彩られた真新しい通帳。 『エンラ・ツバメ』の名前と共に…… 「三百万……って読めるんですけど……コレって?」 身に覚えのない金額に僕は正直困惑していた。 サトウさんは、何故か微妙に僕に笑いかけ……言った。 「これは……当面の支度金ね。 ……ツバメ君は昔【外】にいたから、生活するためにはお金が必要なことは知ってるのよね」 そういわれ 「はい……」 と、うなずく 「ツバメ君を【外】に送り出すことに決まった日に、この支度金も決まったの。 ちゃんと議会を通してあるらしいから……使いなさい」 そう言われ 再び差し出された通帳を両手で怖ず怖ずと受け取った。 「ありがとうございます。 それでは……使わせていただきます」 バックの内ポケットに通帳を入れて ……ためらい気味に白い薄いものを二つ取り出すと。 「サトウさん……コレを」 と、一つ差し出した。 表記してあるのは 『サトウ・アンジュ様』 としるされた封筒。 「今までの感謝の手紙です。……ここ2週間もあえずじまいでしたから もしもこのまま……会わずに里を出ることになった場合。 『ジンさん』から渡してもらおうと思ってましたけど」 そう言うと僕はホッ……と息を吐き出し 「サトウさんに直接言えて良かったです。これで安心しました」 と言って笑いかけると、もう一つをサトウさんの前に差し出した。 その表記を目にし、サトウさんは……フッと微笑んだ。 .
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