冷たき玻璃(ハリ)の朝

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` シンっとした寒々しいものが、空間を支配していた。 外を照らす朝日は まだ山の稜線のみ染めている。 その小さな室内で リィーン―――…。 陽がまださしきらぬ薄暗いそこに 一人の少年がピンッと背を伸ばし座っていた。 仏壇というには、少々質素すぎる簡素なものだったが 小さな燈明が ゆらり……と身じろいだ。 立ち上る線香の煙りが、天井に白い渦を巻く。 その部屋で、たった一人 両手を合わせていた少年。 ろうそくの灯りで朧(オボロ)に映し出されるその姿に、 男にしては儚すぎて 人間にしては危うすぎる……。 そんな奇妙な感覚を、彼は放っていた。
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