冷たき玻璃(ハリ)の朝

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リンの音が止み、両目を開くと、ようやっと拝む手を下げる。 黒く、大きく、名のある人形師が彫り上げたようなくっきりとした流線型の眼(マナコ)。 それは男の子にしては勿体ないほどの、華のある凛々しさ。 だがしかし…… 長い睫毛が影となって『光』を遮り続ける。 黙ったまま見つめる先。 そっと右手をのばし、写真立てを取る。 年若い女性が1人でたたずんでいる姿。 長い黒髪と瞳の美しい人。 もう一つの写真には、4~5歳の女の子の写真。 そちらは明るい茶髪で、大きな瞳。 見つめていると無意識に口元がほころぶのがわかる。 そして 泣きたくなるのを、グッとこらえ、中型のボストンバックにおさめた。 少年は写真の2人に、よく似ていた。
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