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「やっぱり奥の、この部屋にいたのね。
……ごめんなさいね。
実はさっきから、玄関前で何度か、声を掛けてみたの……」
「えっ!。アッ。
ごめんなさい!。
気がつかなかったです……ゴメンナサイ……」
僕は眉根を寄せて俯いた。
「……ごめんなさいは、私のセリフ。
朝早すぎたから……どうしようかと迷ってしまって……
本当にごめんなさいねぇ。勝手に上がり込むまねをして
ビックリしたでしょう?」
と、至極申し訳なく淡々と切り出してくる。
そのおっとりとした語りグチに、人の良さがにじみ出ていた。
それを耳にするや、ハッとしたツバメが、顔を上げ忙しく首を横に振る。
「そんなこと!気にしないでください。
そもそもこの家はサトウさん達の家ですよ!!僕は……」
そう言うと声のトーンと目線が一緒に下がり……。
「僕は……ずっとご厄介になるばかりで、役に立つことなんか何一つありませんでした。
それどころか、いろんな迷惑ばかりかけてます……」
サトウさんが、僕の側に歩み寄り畳に膝をついたのが、目の前にのびてきた『影』でわかった。
「だから謝らないでください。
サトウさんの声を拾えなかった、僕が悪いだけで……」
一瞬。静寂がひろがり…
ツバメは、わずかに小さく息を吸う。
「それはそうと……」
ツバメは顔を上げた。
「サトウさん
こんな朝早く何か急遽(キュウキュウ)なことでもありましたか?。
それとも僕が
何かしてしまいましたか……」
ここ数年は、この家で『一人暮らし』のようなことを続けてきた。
サトウさんも忙しい人なので、自然にそうなった。
僕はサトウさんの手を、少しでも煩わせたくなかったから
『自分の事は自分』
でしたかった。
ここ数日の『自分』の行動を、必死に脳裏に思い返す。
どんな些細な事さえも『僕』のことになると途端に『オオゴト』にされたから……。
そのたびに、『サトウ』さんが間に立ってくれた。
ジワリッ……と嫌な汗が出る
最後の最後まで迷惑をかけたくなかったのに……。
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