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ひんやりとした空気の層に包まれた空間に入る。
そこは薄ぼんやりとした場所で……ずっと先に二つの炎がゆらゆらと、陰を生み出していた。
ピシャッ―――……
襖を閉め振り向いたその先に、薄藤色の襖の前には、両脇に控える『もの』がいた。
それが、ジッと様子を窺っている。
すいっと立ち上がり……その者のもとに急ぐと。
膝をつき、
椀を置き、
両手指先を揃え、
頭を下げた。
『再度、昏睡状態か……サトウ殿。気をしっかり持たれよ』
空気が震えた。
ゆらゆら
影が踊る。
アンジュより大きな白い毛の猫は、赤い目を爛々と見開いてそう呟いた。
「お気遣いありがとうございます」
『華奢な子ですね……高熱に耐えられるのかしら?……苦しそうで可哀想だわ』
隣に同じ体格のもう一頭の猫が、心配げにでも慈悲深い青い目で聞いてきた。
「分かりません。……まだ、ご迷惑をおかけすると思います。申し訳ございません」
二頭の猫は互いに目を見合わせ……。
『『御館様がお待ちだ。入れ』』
スッ――――。
開かれた襖。
「失礼いたします」
立ち上がるアンジュに向けて、突然。
『サトウ殿……』
ボソッっと赤目は呟いた。
アンジュの足が止まり見つめた。
『その……何だ……もし『子供』に……異変が出れば真っ先に伝えよう』
少しぶっきらぼうに、赤目の猫が言う。
「!!……重ね重ね有り難うございます。感謝いたします」
『いいから、……行け!……お前は笑うな!』
赤目は、頭を再度下げるアンジュを促(ウナガ)しつつ、意味ありげにクスクス笑う片割れを睨んだ。
『フフッ。ごめんなさい。アナタが珍しく気の利く優しい事を言うものだから……さぁ行きなさい。お待ちよ』
青目もアンジュを促した。
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