きみがため まもるため

4/30
前へ
/95ページ
次へ
ひんやりとした空気の層に包まれた空間に入る。 そこは薄ぼんやりとした場所で……ずっと先に二つの炎がゆらゆらと、陰を生み出していた。 ピシャッ―――…… 襖を閉め振り向いたその先に、薄藤色の襖の前には、両脇に控える『もの』がいた。 それが、ジッと様子を窺っている。 すいっと立ち上がり……その者のもとに急ぐと。 膝をつき、 椀を置き、 両手指先を揃え、 頭を下げた。 『再度、昏睡状態か……サトウ殿。気をしっかり持たれよ』 空気が震えた。 ゆらゆら 影が踊る。 アンジュより大きな白い毛の猫は、赤い目を爛々と見開いてそう呟いた。 「お気遣いありがとうございます」 『華奢な子ですね……高熱に耐えられるのかしら?……苦しそうで可哀想だわ』 隣に同じ体格のもう一頭の猫が、心配げにでも慈悲深い青い目で聞いてきた。 「分かりません。……まだ、ご迷惑をおかけすると思います。申し訳ございません」 二頭の猫は互いに目を見合わせ……。 『『御館様がお待ちだ。入れ』』 スッ――――。 開かれた襖。 「失礼いたします」 立ち上がるアンジュに向けて、突然。 『サトウ殿……』 ボソッっと赤目は呟いた。 アンジュの足が止まり見つめた。 『その……何だ……もし『子供』に……異変が出れば真っ先に伝えよう』 少しぶっきらぼうに、赤目の猫が言う。 「!!……重ね重ね有り難うございます。感謝いたします」 『いいから、……行け!……お前は笑うな!』 赤目は、頭を再度下げるアンジュを促(ウナガ)しつつ、意味ありげにクスクス笑う片割れを睨んだ。 『フフッ。ごめんなさい。アナタが珍しく気の利く優しい事を言うものだから……さぁ行きなさい。お待ちよ』 青目もアンジュを促した。 `
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加