8人が本棚に入れています
本棚に追加
「母親が産んだばかりの雌だけ選んで……『捕食』するから……だったな」
トーコの言葉に空気が凍る。
「捕食じゃと?……親が子を?」
イサが信じられないとばかりに呟く。
「生まれたばかりの幼体の雌は『新しい毒に耐性を持った抗体』を持つ。
また、代替わりの時期は出産を終えた『母親』を生まれたばかりの雌が『既存の抗体持ちとして捕食』することも確認されています。
他に質問は?。」
「何故『毒死』するかもしれないと思った。その意味を聞きたい」
発したのはアンジュ。
細めた水色の目が、外光をギラリッと弾(ハジ)いた。
はぁ~……。
箸先で掴んだ青菜のお浸しをはなすと、周りを見渡すグァ・バラ。
「……皆さん反応しすぎですよ。こわいですって」
ヤレヤレと、箸を膳の上に戻し、きちりっと正座し直した。
「シノノメ殿の方は治療ができる自信がありますが『あの子』はねぇ……九年……いや十年。久し振りに体を見ましたが、正直な所、何ともいえないのがホンネデしたし……まぁそれでも」
「じゃあ……何だ」
アンジュはグァ・バラの言葉を遮った。
「ツバメ君の治療を引き受けたのは『実験体としての興味』か!。それとも『恩を売って』過去のことを無しにとでも!!オマエのことだ『面白そう』!!とでも思ったか!!」
「アンジュ」
「ッ悔しいのです!!シノノメ殿。私は…ぁ『あの時』のツバメ君が、今も脳裏に焼き付いて!」
ギュッ―――と誰かを抱き締める様に。
自分の身を掻き抱いた。
「『あの女』と『この男』が……あの子は、耐えてそれでも容赦なく追い詰められて」
眉根を寄せ唇を戦慄(ワナナ)かせる。
「……『あの頃の傷』はまだ……残ったままで」
ギロッッとグァ・バラを睨む。
ビックッ。
動揺か。
グァ・バラの上体が小さくはねた。
「……『あの女』には立場上『制裁』は加えられない……だからツバメ君を護るために、余所者の私が唯一出来たあの子を守る方法『左門頭』を受けたのです。そすれば行方知れずになった『グァ・バラ』を捜しだして!!いずれ……」
ギリギリッ噛み締めた奥歯が鳴る。
「こんな事態じゃなければ、先程現れた瞬間八つ裂きにしてたわ!!」
「アンジュ」
シノノメの落ち着いた声が空間に静かに響く。
最初のコメントを投稿しよう!