きみがため まもるため

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` 「わかった。よくわかった」 怒りに震えるアンジュを。 慰撫するように声をかけ続けるシノノメ。 漸く落ち着いたアンジュは、シノノメに向けて両手を揃え深く、深く頭を下げる。 額が白い畳を擦るほど。 「……私事で、騒ぎ立てて申し訳ありません」 かみしめるように呟き、頭を上げた。 そして向き直り 「……先程は私の本心だが、この場で余りに言い過ぎた。だが陳謝はしない……何故ならグァ・バラ『あの事』は事実で……『あの子』を傷つけた」 一語一句それは鋭く 「だから……結果次第では……容赦はしない」 目を細め鬼気迫るその姿に、室内が静まりかえる。 「グァ・バラ」 静寂を打ち破ったのは、シノノメの穏やかな声。 「……何です」 ヘラリッと笑いかけるが先程より、力無く表情は冴えない。アンジュの厳しい『心から』の言葉に 何を感じたのか。 ただ、すべてを呑み込む小男に問いかけた。 「私とツバメ……同じ治療で『違い』は体質か?」 顔を上げるグァ・バラ。 見つめるシノノメ。 妙な間が漂う中、小男はソロリッと口を開く。 「……異種間同士の『あいのこ』ですよ?。事実今回の処置は……悩みました」 ` チラリッと周りを見渡し 「母親は『里』の血がありますから……実際、此方の医療も効くでしょうが」 浅くため息を吐く。 「それは昔の話。今は『大人』とも『子供』とも『種族に関しても』どっちつかない不安定な中間期。 抗体……いや血清に対して、どれだけの『適量』が必要か……いや『安全』か。 我らと違う体……もしかしたら『血清治療』した瞬間、『死亡』に陥る予想もありました」 ザワリッ―――! 動揺が広がる。 「実際、血清を体内にうちこめるように安全に『精製』したころには……体内の『深部温度』が下がる『危険兆候』が出ましてね。」 聞かされていなかった話に、誰かが息をのんだ。 「予想通りシノノメ殿は、体内になじんで直ぐ起き上がれるまでに回復しましたが……あのこは危険なまま全く変化を見せなかった。が。……意識が戻り『高熱・昏睡』の症状を聞く限り、どうやら……」 すっと周りを見渡し 突然。 ニヤッ――と笑うと…… 「思った以上にあの子は丈夫かもしれませんねぇ。今、越えようとしてますよ『峠』」 `
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