きみがため まもるため

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` 一瞬、静寂が広がる。 「真(マコト)か?……」 シノノメが探るように聞く。 「……何ですか。この失礼な空気は……コレでもワタクシは研究者兼医者。それなりに任せられたことを一生懸命にするのがワタクシの信条。 ……仕事にかんして嘘はつきません」 三日月のような目が、周りを見渡す。 何故かヘコんだ表情をした。 「気を悪くしたなら悪かった。 それで『峠を越える』?とは……それは治ろうとしていると言うことか?。」 思わずシノノメが質問をする中。 やや早口でトーコも問い掛けた。 「私は緑樹医だ。医療に関しては実のところ専門外だが、素人よりは知識はある。 しかし今、疑問がある。 我々は『血清治療』だけで回復するが、例え『薬』を服用したとしても、我らは『高熱や昏睡等』の症状は有り得ない。 大地の恵みと加護により、一気に治るか……間に合わず死して塵(チリ)となりくずれるかだ。 この違いは、あの子の体質の所為か?どうとらえればいいのだ?」 うーんと上を見上げたグァ・バラは、口を開いた。 「シノノメ殿は体外接触。あの子は呼気吸収(コキキュウシュウ)同じ『蜘蛛毒』ですが。 あの子の場合、我らと同じ『血清治療』だけでは助かりませんよ。……何、難しい話ではありません。ただ……やっぱりあの子の体は」 突然。 面白そうにニヤケた。 「『ヒト』からも出来ていますしねぇ……『免疫』って知っていますか?」 「メンエキ……?」 アンジュが戸惑うように呟き。 シノノメやイサも聞き慣れない言葉に顔を見合わせる。 「ぁあ!……だから『高熱』か」 ただ、トーコは漸く合点がいったように何度も頷いた。 「メンエキとはナンじゃ……」 イサが困惑したまま呟く。 「えーとねぇ……ヒトが持つ『防衛本能』とでも言うのかな? ……ねぇ。キミなら分かるはずだよね?キミだよきみキミ」 箱膳に行儀悪く右手で頬杖をつき、左人差し指でぷらぷら部屋の隅を指差す。 「その時、結構な騒ぎだったと聞いたよ。 その中であの子に簡易的ながら『気道確保』の応急処置を施(ホド)す医療的知識のあったお嬢ちゃんに聞いてんだよ」 「僭越(センエツ)ながら……」 強張った堅苦しい シロウの声が響いた。 「言わせていただきます。 ……ヒトという種族には、体外から入り込まれた『異物』を除去しようとするシステムがあります……その一つが『高熱』です」 `
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