きみがため まもるため

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` 頭を上げ、皆が見つめてくる視線から逃げるように 目線を……そっと下げた。 「抗体を持つ血清は我らには有益な『毒消し』ですが。 ツバメ様の体質には、強すぎると判断されたのでしょう。 『ショック死』を避ける為に、通常より少なめに与えたと思われます。 だから、完全な『毒消し』として作用はせず『弱毒化』で終わったのでしょう。 でも『弱毒化したウィルス』を、体内に放置し続けるのも危険。……だから」 いったん口を止め、顔を上げると。 シロウはグァ・バラを見つめた。 数秒の沈黙。 シロウがすっと視線を反らした。 「もしもツバメ様が意識を戻したときに、グァ・バラ様は……ヒトの持つ免疫力を『補助』するための『薬』を調合したのでしょう。 拝見しておりましたが、あまり我々には馴染みのない代物を調合しておられたご様子。 結果『高熱』が出たのは、ツバメ様の体内温度を上げることで『弱毒化したウィルス』を攻撃しているものと考えられます」 チャプッッ――――…… 銀色のヒレが水面を叩き陰影の波紋が広がった。 皆、ポカンとした顔で畏(カシコ)まる少女を見つめるなか、 箱膳に頬杖をつき何かをジッと思うていたらしい小男は、口を開く。 「ボクは……きみを少しばかり侮っていたようだ。 ……なかなかどうして君は優秀だねぇ。 あぁ……そうか」 細く月のような目が、少女を射すように見つめたグァ・バラは。 「君は『翠梢(スイチョウ)』の娘か」 と、ぽつり呟いた。 その目に懐かしさを宿して…… 途端、弾かれたように顔を上げたシロウ。 「……なぜ……」 訊ねたわけではない。 ただ 純粋に驚きにみちている目を向けた。 「懐かしいねぇ。キミ似てるよ。 アイツ……あれからいつ逝った」 風が室内に優しく吹き込んだ。 シロウの目には微かな動揺が見て取れたなか。 「半月だ。……最期まで独りで……最期は誰にも看取られず。 亡骸は丘に埋葬した」 トーコの乾いた声が空気に響く。 「『これが私の運命』……ハハハ……そうかぁ」 グァ・バラが呟く。 シロウを見つめて。 「……聡いのに妙なところで涙もろい、鈍くさい奴だったが……。 そうかやはり逝ってたか」 ほんの一瞬。 虚空を見つめ 「『医学』に関しては頑固だった。割り切れば楽だったのにねぇ……ばかなやつだよ」 どこか悲しく、苦く笑った。 `
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