きみがため まもるため

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` グァ・バラはゆるゆると背を正す。 胸元を探り何かを引き出すと、パチリと開けた。 「生きていればいろんなことが、起こりますねぇ。 いやはや驚きでした。 あっ」 グァ・バラの声に皆の視線が向いた。 「ちょっとだけしゃべったつもりでしたが……もうこんな時間。 そろそろ、目覚める頃なんですけどねぇ……」 と、つぶやくと。 「アッ!」 イサが声を上げた。 「……そうか。グァ・バラ・オルイト。思い出した間違いない」 恐怖で戦慄いた唇で紡いだ言葉。 「お主、表沙汰にされてないが、昔あった『あの事変』の首謀者と当時かかわっておったな――!。 主らのせいでこの里も他のところも、被害をうけたのだぞ!」 イサが。 そう声を荒げた。 「チッ……」 ニヤニヤ顔が、途端に憮然とした表情になり、小さく舌打ちをしたグァ・バラ。 その事に気付きカァッ――。 と、顔を赤らめたイサは 「グァ・バラ!。主は今、我に向かって!!」 「フン。……やっぱり気位の高い上流階級者ほど綺麗事がお好きなようで……大体貴女から糾弾される覚えがないのですが?」 「何!!」 いきり立つイサに 「貴女も『自分こそが正義』……と、うぬぼれていらっしゃっる勘違いな御方だ」 「なっ!」 「たくさんの死があったのは……全てワタクシのせいだとでも?。 お上品な方の考えは、狭くて、ズルくて、紋切り型の……お子様の思考だ。 そもそも『刑期』も終えてないワタクシを…… 一時的とはいえ『上流者の権限』で治療をしろと勝手に引っ張り出され、 それなのに、『当時のこと』で突然責められる……此方の権利など無視でオモシロく無いですねぇ……」 イサはハッとした顔をした。 みるみる青ざめ唇をかむ。 「上流者との、交換条件付の裁判をしたのか……」 シノノメが語りかけた。 「……それなら、大衆に報告義務がない。 本来の裁判が行われていれば、誰もが耳にしていた。 私も聞いていない」 シノノメの声にグァ・バラは目線を向ける。 「この里で、囚人を囲える権限を持つのは『暗宮(アングウ)』しかおらぬ……早朝から突然の事で悪かった」 坦々と呟くシノノメに フッ…… グァ・バラは笑った。 「おやおや所詮、囚人のワタクシの言うことなど信じないのでしょう?」 その目に、侮蔑の色を乗せて。 だが 「無論、信じる」 淀みがない答えに、目を見開くグァ・バラ。 `
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