冷たき玻璃(ハリ)の朝

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` サトウさんは、さっきまでの僕の雰囲気とは、何かが変わったことを 察知したようだった。 「もう。……大丈夫?」 「はい『大丈夫』です」 まっすぐに答える自分 大丈夫です。 僕は貴方から今まで、育ててくれた長い長い時間の果てに『今』着ました。 僕は、畳に両手をそろえた 貴方がくれた『優しさ』を サトウさんの、糸目がわずか開く。 僕の突然の行動に目を、シバタイテいる。 僕は『勇気』に変えてみせる。 「サトウさん」 僕はそのまま、深々とサトウさんに頭を下げた。 見えない頭上から、小さく息をのみ たじろぐ様子が感じられた。 しばしそのまま頭を下げ続け……頃合いを感じてゆっくり頭を上げる。 視線が交わった 寂しそうな、悲しそうなそして心配。 そんな表情サトウさんらしくない。 サトウさんは、穏やかに 優しく 強く 笑っていてほしい。 僕は ぼくこそが 変わるんだ。だから 僕はこの人の為に、今笑いたい。 大丈夫です。 かおが自然にゆるみ、微笑むことが出来た。 サトウさんは、僕を見つめ……見つめ続けて 何時もの穏やかな笑みをようやく見せてくれた。 「もう……『大丈夫』なのね」 `` 「はい……もう充分です。サトウさん」 僕はサトウさんの目を、しっかと見据え。 「今まで十年間、本当に本当に……ありがとうございました。」 「……ツバメくん」 「サトウさんが、すべてを引き受けて 僕を1から育ててくれたから、今の僕があるんです。 ……僕にとってこの里の」 僕は笑い泣きになっているに違いない。 「大事な『お母さん』でした」 こんなこと照れ臭くて言えない。 でも 今言わないと、いつ言えばいいのだろう 急にあわただしく決まった今回の『解放』 でも、正しくは…… .
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