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自分の意識が浮上していくのを、ぼんやりと感じていた。
明るいどこかに
唐突に引っ張り上げられる感じに。
抗(アラガ)いもせず
されるがままに
涼しい空気がのどを通り
自分の血がめぐる
リズム良く鼓動を叩く。
そして……
うつらうつらと
ぼんやりとした
暖かい幸せなぬくもりにまどろむぼくの顔を
やさしく
とてもやさしく
撫でられている感覚に気付き……。
安堵仕掛けて……硬直する。
額から目元にかけて
撫でるその手の感触に
知らない感触に
誰だ?……この手はダレ!?。
びっくりして目が覚めたのは初めてだった。
が、
「あ!……」
この手の持ち主も――ビクリッと震わしてパッと手のひらを引っ込めた。
どうやら
僕の睫毛の先が開くと同時に手のひらをなで上げたみたいで
目を開けたとき手で覆われた赤暗い暗さから、一瞬で眩しい光の洪水にさらされる。
「……ぅ…」
唸って眉を寄せた僕を見つめる視線。
目を開けようと瞬きを繰り返す僕と、視線があった。
藍色の着物。
見下ろしてくるその表情には見覚えがあって……
「……気分はどうですか」
どこか事務的に、素っ気なく聞かれたから。
「ぁ……悪くないです……と、思います」
と、返して
思い出した。
「……コウヤさん……此処は?僕、どうして……寝てるの」
でも、
なにがあったかは覚えていない。
僕の返事の何に反応したのか、
嬉しげに
フッと、顔をほころばせて笑ったから。
寝たまま顔を見上げるのに、恥ずかしくなった。
被さっていた……びっくりするぐらい上等な布団を押し上げて、むくりっと起きあがった僕の背中に……ソッと左手を添えてくれた。
「のど乾いてるでしょ。……飲みなさい」
起きあがった僕の背中に誰のか分からないが、上着が掛けられた。
キョロキョロと挙動不審に部屋を見渡す。僕の手に渡したのは
ひやりとした水滴が浮かぶ白い焼き物の湯呑み。
「ぁ……有り難うございます。……ぇ―と、あのう」
「色々聞きたいこともあるでしょうが。まず、飲みなさい。それからです」
頑として言い放つコウヤさんに絆(ホダ)され……
おそるおそる口を付けた水が、……なぜか甘く感じられ夢中で二杯飲んでしまった。
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