きみがため まもるため

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` 「どうしました?」 振り向いたそこには、何十となく御簾が下げられていて その手前の一枚に ぼんやりとした人影が浮かんでいた。 しかし その人影は身じろぎひとつなく、反応なく立ちすくんでいた。 「……コウヤさん?」 「申し訳ありません……」 糸が切れるように ゆっくりとしゃがみこみ コトリッ―と何かを床に置くと、僅かに御簾を巻き上げ スッと箱を滑らしてきた。 「先程の洗浄した品の中に、ひとつ入れ損ねてしまいました……」 「あ?」 立ち上がって近づくと、乱れ箱の中に、見慣れた黒いアンダーシャツがあった。 「ぁ。ありがとうコウヤさん」 身をかがめて、しっかりとした厚手の黒いシャツを手に取る。 「……お召し替えが終わられましたら」 御簾越しの言葉に顔を向ける。 うっすらと浮かぶコウヤさんの姿は、後ろ向きでこちらを向いておらず…… 否 僕は、コウヤさんの様子が先程とは違う と、 小さな違和感を感じた。 「お呼び下さい……」 何十もの御簾を巻き上げながら、その向こうに消えた時。 僕は漸く気がついた。 コウヤさん 声が……ないていた?。 「此処は段があります。お足元にお気をつけください……」 数分後、そう言って僕の前を歩き導くコウヤさん。 あの後、 僕は頭を乾かして、アンダーシャツやベストなどを着込むと、恐る恐るコウヤさんを呼ぶ。 再度、現れたとき……泣いていた素振りは無く……。 僕の気のせいだったのか?。 内心首を傾げる僕を、庭の見える別室に通したコウヤさんは、僕に朝食を用意してくれていた。 僕はどちらかというと食は細い。 ましてや早朝に簡単な食事をとっていたのに、ナゼカお腹が空いている自分に驚く。 それでも軽めに済まして満足する僕がいた。 食事を終え一息ついた僕を一別すると、 「参りましょうか……」 「え!。ぁ……ご…御馳走様でした!」 そう言って立ち上がったコウヤさんの後を、慌てて追いかけた。 そんなこんなで、連れて行かれる先の事など僕に分かるはずも無く。 `
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