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隅に座るとふたを開け、次々と茶器を取り出す。
そんな所作を見つめていると
「さて……ツバメ」
「ハッはい!―」
慌てて顔を向ける僕。
「体は、体調は万全か?」
「?。大丈夫です」
「痛みも苦しさも無いのだな?」
探るように聞いてきた。
「はい」
「よろしい。これなら」
チラリッと誰かに目配せした。
その先に
僕も先程から気になっていた、女性が頷いた。
口元を白い布で覆い、すっと背を伸ばしている。
上品な成りで
でもまとう空気は『君主』のそれで。
シノノメ様に似ている。
なんとなく
ふと、そう思った。
ザワザワと風が室内に滑り込む。
「伝えなければいけないことがある。と、【本宮】で言った事は覚えているか?」
「はい」
僕は返事を返した。
「その前に、謝らなければならない」
「えっ……!?」
ユラリッ――目の前の体が動き、頭が下がる。
「今回の八盗蜘蛛の一件は私の失態だ。……あれは私の不注意。すまなかった」
「!!?。」
僕に頭を下げる意味も。
理由もわからぬまま、固まってると、その女性が、声をかけた。
「事の詳細を話しなさい。畏縮している」
その声に。シノノメ様は頭を上げ、僕の様子に苦笑した。
「驚かしたか?すまない」
そう言うと、
「ツバメ。
実をいうと今回の八盗蜘蛛の毒で、ツバメは死にかけたのだ」
「……ぇ?」
僕は、目を丸くした。
「しに……かけた?」
意味がつかめず、言葉を繰り返した。
「八盗蜘蛛には『猛毒』がある……意識を失う前のことは覚えておるか?」
―『猛毒』――
……ハッとして
振り向いた先に、サトウさんと目があった。
『ツバメ君を連れて―』
そうだ。そうだった。―――
黒い刀が。
血にまみれた白い蜘蛛の生々しい匂いが。
「……危険な状態だった」
シノノメ様の声が
耳に
流れるように、シロウとも目があった。
『八盗蜘蛛には猛毒が―』
覚えてる。確かにそう言った――
そして
雨のにおい。
日溜まりの香り
―『あいたかったの』―
ぎゅっと抱かれて
なきたくなる。
あかい。
アカイ。
赤い。
ジリジリとした灼熱。
振りオチル。
バラけた白い紙片。
鼓動がはやくなる
―『だ――いすき』―
ぎゅっと抱かれて
―『コレデ、ジユウダ』―
なんだ、これ。
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