きみがため まもるため

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` 誰も ダレも 無言。 その中で、 ただ、淡々と。 シノノメ様が語り出す。 「色々と、言わねばならぬ事がある。 その事で、尋ねたいことや、言いたいことがあるだろうが 此方にも、ツバメにもあまり時間がない。 質問は手短に それと 今から言うことは……」 シノノメ様は、周りに視線を巡らし 「……他言無用だ」 と、言った。 風が室内に吹き渡り トーコ様が口を開いた。 「今から……三百八十年前。丁度この【里】の創世者……【初代・奥の神子様】が お隠れになられましたことは、皆様ご存じですね」 「【奥の神子様】……?」 僕の知らない単語。 「初代・神子と言うと……ハサエ・ビア様だったな。 古い話だがそれと、カオルの遺品と!……どう結びつく?」 イサ様は眉をひそめ、睨みつけるように、血で汚れた包みを見ながら語った。 「その次代についた神子は、シズゥー・カイラス…… 既に四百歳を迎え、現在も【里】を守り導いてくださる……我らの 【生きる神託者】である」 トーコ様が淡々とのべた。 「400歳……神託者?」 僕は無意識に呟いた。 「……ツバメ。 【里】に住む我らの方が 【外の人】より長寿の者が多い。 人は百を超える事は、出来なくはないが難しい。 しかし 我らは、百は楽に超えられる。 それは人と……種族が違うからだ。 それでも我らは、四百まで生きられない しかし、隠れられたハサエ様は記録によれば六百歳を数え シズゥー様は今もなお永い生を生き続ける…… ツバメ。 それは何故だと思う」 トーコ様が言葉を区切った。 僕は…… 迷いながら、ぽつりと言葉を押し出す。 「それはシズゥー様…… 【奥の神子様】が、特別だと言うこと……ですか?」 「そうだ。そして……」 ヒタリッと 僕を見つめる トーコ様の視線が えぐるように僕を突き抜けた 痛いほど、冷ややかで…… 間を空けて トーコ様の唇が再度動くのを見て 僕は、無意識に…… 「……カオルは」 両耳を押さえた。 「【次代の神託者】として 【奥の院】に選ばれていた」 .
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