冷たき玻璃(ハリ)の朝

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` 縁切りという名の 『追放』 この『里』を出たが最後 もうここには戻れない。 「……ダメねぇ」 そう言うとサトウさんは、身に着けていたエプロンを両手ですくい取り……それに自分の顔を押しつけた。 しばらく、 二人静かに泣いた。 「……ツバメくん」 潤んでしばたく目元を拭いツバメは顔を上げた。 うっすらと朱色がかった顔で両目をぬらしたサトウさんは、微笑んで 「そうね……15になるのよね。 ……私もいつまでも小さな子どものつもりで接してはだめね。 まだ、一月先だけど……お誕生日おめでとう」 「ありがとうございます。それとこの服も、サトウさんですよね……?」 そう言うとツバメは、自分が着ている服に手を当てる。 「私が選んだわ……よかった。とても良く似合ってる」 その出で立ちはツバメの白い肌、黒い髪に映えていた。 アイシーバイオレットのシャツ ミディアムトゥルーグレーのベスト チャコールグレーの細身のパンツ アクセントにレモンイエローのネクタイ バックのそばにきちんとたたまれているネービーブルーのダッフルコート ツバメは少し顔を赤くして、おずおずとたずねる。 「着方、変……ではないですよね?」 「大丈夫合っているわよ。 ほかの数着も同じサイズを合わせておいたわ。 あとは問題はないわね」 「……あっ」 ツバメが何か思い出したのか、バックを開けて……四角い何かを取り出す 「あの……コレなんですけど」 と、戸惑い気味に薄い冊子を渡す。 受け取ってそれを開いたサトウは 「コレがどうかした?」 「……多すぎませんか」 .
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