きみがため まもるため

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` 感極まり 泣き出しそうな声で 「我はシノノメの足を、何時も引っ張る……」 イサの髪をなでるシノノメ様は笑った。 「我は愚かで……」 「君は」 シノノメ様は言葉を挟む。 「君が、思っている以上に『他の者にやさしい』事に気づいているかい……」 腕の中でぴくりと動くイサ様。 「『他の者を思い泣く』 ……それに、何度も私は救われているんだよ。 イサを妻にして良かったって……本当に良かったって 私と共に歩んでくれて ありがとうイサ。 私の大事な愛しい者……」 安心か 安堵感か シノノメ様に ギュッとすがりついたイサ様は 声もなく、 ……ただただ静かにすすり泣く。 「初めて貴女から、抱きついてくれましたね……」 シノノメ様は優しく抱きしめ呟いた。 「カオルに同感だね。我が弟は、いい男だが 【カオル】には似合わない 一緒になることは万に一つもない。 ……他の者から見たらそう思わなかったみたいだがな」 姉の辛辣なセリフに、苦笑気味に笑い 「ごめん。姉さん……途中で話の腰を折って ツバメに続きを……」 「全くだ。 二人は夫婦間の話し合いが壊滅的に足りない。 仕事ばかりして イサ殿が不安に成るはずだ。 ツバメ」 トーコ様は僕に声をかけた。 「カオルは三代目の【奥の神子】に選ばれていた 此処までは分かるか?」 促され ギクシャクとしながら首を縦に振る。 トーコ様がちらりと室内に視線を巡らし 一瞬 壁際でとまる。 そのまま 「……【奥の院】に呼ばれたカオルが【神子】に選ばれた時 私はその場にいた。 何故なら 私も【緑樹医】に選ばれた直後だったから 私達の祖父が前代の【緑樹医】でね。 【奥の院】で 【ほうぐ】 によって選ばれるんだ」 「りょくじゅい?……ほうぐ?」 オウム返しに小さくつぶやく僕。 「緑樹医だ。 この里の木、草、花、実り、全てに 【医術と癒やしの法力】を司る職だ。 そして……」 突然 トーコ様の 右の手のひらに 白く輝くひかる棒が、出現する。 けして暗くない室内を 清浄な光が より濃い影を作りだす。 「コレが私の【ほうぐ】だ。 私はコレに選ばれた…… 祖父が使っていたモノ。 緑樹医の証だ。 後 現存しているもので『七十八』在るらしい。 そのうちの一つ……」 .
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