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事もなく
あっさりと告げられる言葉に
二の句が継げないでいると
「……違うな。
『高位のモノだった』だな」
「え……?」
そんなトーコ様のつぶやきを追うように
「カオルの【ほうぐ】はね。
【奥の院】に、返すことができないそうだ」
シノノメ様がそう告げた。
「……【ほうぐ】であるが【ほうぐ】では無くなった
シズゥー様がそうお決めになった
理由は二つ
枚数が足りないこと。
内包する力が変質したこと。
特に力の変質が【奥の院】で所蔵する事が出来なくなった大元の原因だ」
続けてトーコ様が僕にそう告げる。
「力の変質……でも」
「でも?」
「トーコ様。だからといって……」
僕は迷いながらも、口を開いた。
「僕はこの後【里】から居なくなります。
もう、恐らく此処には……。
【里】から
物を持ち出してはいけない決まりがあるでしょう?
実際僕が使っていた私物も……
【里】のものは色々置いて来ましたし……」
手の中のカードを見つめ
ぽつりぽつりと
自分に言い聞かせるように
この場にいる皆に
後々
迷惑だけはかけたくない。
そんな思いをさせてまで母さんの使っていたそれを
手にした後の怖さに
怖じ気付いていた。
皆が皆
やさしいわけではないのだ。
「カオルの願いでもか?」
「そ……それは」
ギュッと手の中のそれを握り締める。
「ツバメが要らないなら処分する事になるぞ。
シズゥー様からも許可を得ている」
「処分……どうして?」
「力が変質したと言っただろう?。【里】にも【奥の院】にも
置き場がないんだ
誰も触れず
扱えなくなっているんだ
カオルと」
僕を見つめ
「ツバメ以外は」
言われたことを思い返し矛盾に気付く。
「トーコ様は先程手にしていた筈では……」
「手にしているように見えただけだ」
トーコ様の手のひらに
僅かに“浮かぶ"
ひかる棒。
「……コレは、今までどこに」
「『聖上の峰』に結界を張り安置していた。
今ほうぐの力でこの場に呼び寄せた。
管轄地だから出来たこと」
「……わざわざ」
「カオルの最初で……最後の頼みだったからな」
「最後の……」
ことばがでない。
風が僕の髪をさわった。
「僕は、二人を
余りよく……おぼえてません」
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