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(気付かれてないといいけど……)
いつもと変わらないはずなのに、うまく身が入らない。
どうしても、隣に居る存在へと、意識が飛んでしまう。
(私は、どうしたんでしょうね……)
――――
「沖田はん、ウチを選んでくれて、ホンマに嬉しおす……」
誘うように漂う香りと、艶かしい灯りに包まれる部屋で、二人きり。
そっと、遊女は沖田の胸へと寄り掛かった。
「いえ、今夜はお付き合い頂いてましたから。
とても楽しい時間を、ありがとうございました。
それでは、私はこれで」
沖田は、遊女の肩に優しく触れ、自身の胸から離し、背を向けて襖へと歩き始める。
「……え? どちらへ?」
「え? ああ、私はこれで帰ります」
にっこり笑って沖田は言った。
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