誘惑

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「俺、本当に初めてなんです!」 「うん…俺も初めてだよ?」 佐伯は、きょとんとする俺の肩を揺さぶる。 「じゃあ、なんで疑うんですかぁー!」 「いや…疑うっつーか…」 千晴は佐伯の気迫に押されつつも、しっかりと彼の琥珀色の瞳を見据えた。 「元カノでたたなかったのに、俺と…その…キス…したら、さ」 羞恥に言葉を詰まらせながらなんとか紡いでいると、佐伯が捨てられた子犬の…いや、土佐犬のような目で俺を見つめた。 「たっちゃったことですか?」 「そう、それ…。男との方が感じやすいんじゃないのかな、と」 何だかちょっと面倒臭くなってきたぞ。 「…でも、男の人にときめいたの…先輩が初めてですもん。先輩だから、こーなっちゃったんだと思います!」 「そんな力一杯言われても…」 俺は彼の真っ直ぐな目を逸らすことが出来ず、ただ佐伯を見つめ返していた。 .
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