誘惑

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新入生歓迎コンパで、俺は珍しく後輩から話しかけられた。 「あの、先輩のお名前…聞いてもいいですか」 新入生歓迎コンパと言っても、これで三回目。 みんな何かとつけて、飲みたいだけなのだ。 「お前は、誰」 俺はぶっきらぼうに呟いた。 俺がこのカラオケサークルに入ったのもただ酒を飲みたいだけで、人との…特に後輩との交流は望んでいなかった。 だからいつも端の席で、黙々と酒を煽っていた。 目が合っても直ぐに逸らす俺に、わざわざ話し掛ける後輩なんていなかった。 今、この瞬間までは。 「俺は、佐伯です。佐伯亮。先輩は?」 爽やかな笑みと共に俺の近くに歩み寄ってくる。 あ、コイツ、意外にデカい。 俺は何故か、背が高い人に惹かれる傾向があるらしい。 俺はジョッキを口元で止め、彼をマジマジと見た。 なるほど、見るからに人懐っこいオーラをしてる。 体もデカいから、まるで尾を振る土佐犬のようだ。 「千晴…」 俺は、ポツリと名前だけ呟いた。 そろそろ酒が回ってきたのか、少しボンヤリとしてきた。 .
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