誘惑

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「千晴、さん?」 「近藤千晴」 なんとなく後輩から名前呼びされるのが嫌で、直ぐさまフルネームを口にした。 佐伯は茶色の頭をガシガシと掻きながら、俺をじーっと見る。 俺は丸くて綺麗な琥珀の瞳に、一瞬ドキッとした。 真剣な眼差しが痛い。 「…なに。俺の顔になんか付いてる?」 あまりに見詰められるとどうしていいのかわからなくなる。 遠慮がちに見上げる俺に対して、佐伯は後輩だというのに俺をしっかりと両目で捉えている。 「いいえ…やっぱり綺麗だなって、思って…」 「…あ?」 綺麗? コイツ、酔ってんのかな。 「佐伯…だっけ。お前、相当酔いが回ってるみたいだけど大丈夫?」 俺は呆れ顔で後輩に尋ねると、彼はきょとんとした顔で口を開いた。 .
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