誘惑

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「え?俺、まだジョッキ半分も飲んでませんけど…」 「あ、そ…」 よっぽど酒に弱いのか、それとも頭がおかしいのか…。 「先輩、俺のこと頭おかしいって思ってます?」 眉を下げて、悲しそうな目を向ける。 俺は思っていたことをズバリと言い当てられ、少し驚いてジョッキをテーブルに戻した。 「当たり前。口説く相手を間違えるな。女はあっち」 俺は隣のテーブルを指差す。 女だけのテーブルに、ちらほら口説きに行く男共が目に入る。 佐伯は手を横に振った。 「口説くってゆーか…ただ先輩と話したかっただけなんです。綺麗って言ったのも嘘じゃありませんよ。 一年の女子達も、先輩のこと綺麗だって言ってましたから」 何度も「綺麗」だと口にする佐伯が、嘘をついてるとは思えなかった。 それに、コイツは頭がおかしい類の男じゃないらしい。 俺は生まれてこの方、男に告白された経験が豊富で、そういった目で見られていることに多少は自覚があった。 けど俺は、誰とも付き合ったことがない。 興味本位で、女の先輩に誘われるがままシたことはある。 けど、女に告白されても付き合おうという気にはなれなかった。 .
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