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「先輩、何学部?」
佐伯はボーっとする俺に、たわいない話をかけてきた。
家はどこか、電車通か、誕生日はいつか、彼女はいるか…など。
「いないよ。女なんて」
俺は残っていたビールを飲み干し、少々上機嫌になっていた。
「いないんですか?…って、先輩飲み過ぎっすよ。顔赤いですし」
俺は人前で酔いつぶれたことはないが、今夜はそんなペースで飲み続けていた。
心配そうに俺の顔を覗き込む佐伯に、心臓が跳ね上がった。
「うわっ……ビックリさせるなよ」
バクバクと鼓動が速まる。
この動悸は、驚いたことだけの為ではないのだが。
「あ、すいません。先輩、他の先輩方は場所を移して飲むらしいですけど…」
俺はチラリと周りを見渡すと、殆どの連中が立ち上がって会計へ進んでいた。
既に新入生の姿はない。
俺はそんなことに気づかないほどに酔ってしまっているのかと、少し焦りを感じた。
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