誘惑

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俺はゆっくり立ち上がると、レジの方に目をやった。 「おい近藤。お前らは行くー?隣街のファミレスー」 同期の川村が、出口付近で叫ぶ。 みんな既にベロベロだ。 「俺はいい。…お前は?」 向かい側に座っていた佐伯に目をやると、何故だか嬉しそうに首を振った。 なに、その顔。 「コイツも行かないって!」 俺がそう叫ぶと、川村は「そうか、んじゃ!」と上機嫌で去って行った。 俺達はいそいそと、仲間が消えた居酒屋を出る。 すると、外に足を踏み出したとき、一瞬ふらついた俺を佐伯が後ろから支えた。 袖を捲り上げたところから、逞しい腕がさらされていた。 「あ…わり」 俺は斜め後ろを見上げると、困った表情で俺を見る佐伯の目と視線がぶつかった。 .
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