誘惑

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「…先輩、やっぱり酔ってる」 佐伯は少し怒気を含んだ声を出した。 あれから何度も佐伯が止めたのに、俺は構うことなく飲み続けていたのだ。 「うーん…いつもはこんな飲まないんだよ?」 自分でも何故こんなに酔ってるのか分からず、首を傾げて佐伯を見た。 すると、佐伯の頬がほんのり赤いことに気づく。 「ん?佐伯…顔赤いぞ。お前も酔った?」 俺は佐伯に支えられたまま彼の頬を撫でると、佐伯は更に顔を紅潮させた。 「…ッ…酔ってません!俺送りますから、道案内して下さいよ!!」 「…?…うん」 いきなり叫ぶ佐伯を不思議に思いながら、俺達はゆっくりと歩き出した。 数分歩いてバスに乗り、俺の家の近くまで揺られる。 途中で佐伯がコンビニで水を買ってくれたので、俺はそれを口に流し込んでいた。 隣には、窓の外をぼんやりと見つめる佐伯。 その横顔が、何だか切なげだ。 .
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