誘惑

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佐伯はうっすら笑って、また口を開いた。 「いいですよ、別に。俺もしょうがないかなって思ってましたから」 「しょうがない…?」 普段なら人の色恋に興味を示したりしない千晴も、何故か佐伯の話が気になった。 佐伯は少し黙ってから、俺をちらっと見てまた前を見た。 「大学受験からずっと会ってなかったし…それに俺、たたなくなっちゃって」 「え?」 いきなりの暴露にたじろぐ。 「偶に会うと、彼女…すっげー誘ってくるんすよ。最初は可愛いかなって思えてたんですけど…段々萎えちゃって。彼女の裸見てもたたなくなっちゃったんです。びっくりでしょ?」 苦笑する佐伯。 「俺、もともとダメだったんですよね…セックス。 愛がないからって言えばそれだけなんですけどね。 彼女のこと、そこまで好きじゃなかったし…自分で抜いてる方が、幾分かマシで…スイマセン、こんなこと…」 真剣な悩みに、俺は笑うことなど出来なかった。 女に興味が持てない俺は、何だか人事に思えなかった。 バスから降りて、俺の住むアパートに行く。 佐伯に少し休んでいくよう促し、二人で中に入った。 .
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