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#1 弟の決意
ウエディングステーション・アーチ。婚儀の衣裳を決めたりする店舗。
店外ショーウインドーの花嫁のドレスを見つめてる小学生らしき少年が、窓に張り付いていた。
その時、入荷整理係の店員が表に出てきた。
「んん?あれは一体何なんだ」
「どうした。何見てんだよ、忙しい時にさ」
外が暗くなっている時間帯だからか、人影が見えるのかどうか不明だった。目をこすって確認出来た時には、小学生くらいの小さな男児が窓にへばりついていたのだ。
「坊主、こんなトコで何している」
しばらくしてから少年は応答する。
「ここの方ですか?僕、ドレス欲しいのです。」
唖然とする、店員。
「結婚希望の姉に着せたいドレスが買いたいのです」
一人の面長店員が、少年の襟首を掴みながら、強制してみせた。
「坊主さぁ、姉さんと弟が結婚出来る訳無いだろう?鼻水タレがマセたことぬかして、それに今は遅い夜だぞ」
正確に話をしだす、少年。
「離してください。説明不足でした。だから」
店員が手を離す。
「僕は、姉に会う為に結婚アドバイザーという男性が度々、ウチに訪れてくるので、嫌だな~と思ってました。でも僕たち親子にも必要な物資をただで提供してくださるから、訪ねてくる日が楽しみになりました。その人、ルックスが良くて格好良いんです。姉を任せられると思って、お似合いの組み合わせかと思って、それで……」
「まあ、判らない話じゃないが、坊主が窓にへばりつくと仕事しづらいから立ち去ってもらえないか?」
「欲しいんです」
店員が呆れて言う。
「衣裳合わせも必要なんだ。本人が来ないとなあ。まずは筋が合わないとこちらも調整できない。なあ、さっさと諦めてくれ」
突然、衣裳店舗の奥から叫び声があがってきた。
「なーに、油売ってるんだー。こっちは人手足りないんだからな!!」
面長でない方の老け顔店員が応答した。
「すみません。只今、戻ります」しばらくして少年に伝える。「忙しいんだ。こんな状況だから、邪魔するなら立ち去ってもらえないか」
少年は思いつきで答えた。
「僕がオジサン達を手伝います。何なりとお申しください」
「駄目だ。帰りなさい」
しつこく粘る、少年。涙目で頼み込む。
「そんなこと言わないでお願いします」
面長がキレて叫び出した。
「チッ、金欲しさに働くなど他のとこにしてくれ」
「お金じゃなくドレスください」
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