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店員を殴りたくなる気持ちをぐっと堪え、表ではいい人そうに笑顔を振舞う。我ながら腹黒だ。でもそんながんばっている自分に気づいてくれるはずもなく、店員は手首にウェイト巻いてるんじゃないかと思うくらい鈍い動きでレジに品物を通していく。
「こちらのほうは温めますか?」
店員はコンビニ弁当――かごに入っている『から揚げ弁当』をレジに通し、抑揚のない声でそんなことを言った。店員には見えない位置で握り拳を作る。力を込めすぎて手のひらに爪が食い込んで痛い。
付け合わせの野菜が生暖かくなってしまうけど、から揚げが冷たいのは受け入れられない。家に帰って別々にしてから暖めるなんて気力はない。サービスなんだから引け目を感じることもないか。
「はい。お願いします」
笑いが苦笑に変わっていくのが自分でも分かる。まだ我慢できる範囲だ。日本人は我慢しすぎとよく言うが、我慢も時には大事だぞ。
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