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待っている間さっきの店員の言葉が蘇る。
――こちらのほうは温めますか?
だと。こいつは駄目だな。「のほう」はいらねーだろ。というか、「こちら」どころすらいらねえ。「温めましょうか」で十分だ。今は違う仕事をしているが、こちとらコンビニの店長にまで上り詰めたんだぞ。妙な敬語は許せねえ。脳内文句を店員にぶつけていると、電子レンジのピッという音がして我に返った。後姿の店員をギロッと睨み付けると、店員が振り返り目が合ってしまった。胸が一瞬ドキッとした直後、息を呑む。
格好いいじゃねーか、おい。
最近の野郎どもよりは日に焼けていて健康そうだ。貧弱そうな印象はない。目鼻立ちが整っていて、日本人らしくない高い鼻、厚い唇が外国人みたいだ。たるみなど一切ない瑞々しい肌が羨ましい。髭は剃っているのか体毛が薄いのかは分からないが生えていない。薬指くらいの太さに整えられた眉毛、その下には見事な二重瞼がこちらを覗いている。年の頃は二十歳を超えたあたりだろうか。
最近の若いやつはかっけーのが多いよな。こいつも例外漏れしていない。もうここに来ることはないと思うが君のことは『平成ベイビー』と名づけておこう。まぁ敬語も満足にできない野郎に用はないがな。
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