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レグルス国聖都メルガイアの市街地から一歩裏路地に入った所にあるスラム街……
そのさらに裏の裏、スラム街の人たちさえ近づかない場所にそれはある。
裏仕事屋『銀獅子邸』……
金さえ払えば合法非合法問わずどんな依頼でもこなしてくれるいわば闇の便利屋だ。
あらゆる国の重鎮を常連客に多く抱えているその店は、店主と事務員の二人だけで成り立っており、二人はお互いに信頼しあっていた……
「もうっ!起きてください!仕事が溜まっていますよ!」
顔に幼さの残る黒いショートヘアの少女の事務員が奥のデスクに座っている銀色の長髪の青年……俺を起こそうとしている。
「ったく……いつもいつもうるせぇなぁ……ちったぁ眠らせろよウルスラ……」
「うるさいじゃありませんよレイアスさん!今日の仕事だけでも6件あるんですよ!」
事務員、ウルスラが怒りを露わにして、俺にそう言ってきた。
「ったく……しゃあねぇな……行くぞ……」
「えっ!?まだ準備が……ま、待ってください!」
俺が立ち上がって事務所から出ようとすると、ウルスラが焦って女子更衣室に入っていった。
ウルスラは俺が起きるとすぐに仕事をしに行くのを知っているくせに多少の武器以外は全く準備をしない。
『店内では事務員として、店外ではレイアスさんの相方として区別を付けたい』んだそうだ。
「遅ぇ!先行ってんぞ!」
「ま、待ってください!」
俺は待ちきれずにため息をついて事務室を出ていく。
「レイアスさん!待ってくださいよー!」
誰もいなくなった事務所内にはウルスラの声が響き渡るだけだった。
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