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多種術世界ヴァルティア一の大都市、レグルス国の聖都メルガイア……
そこは白を基調とした明るい雰囲気に包まれ、多くの貴族の屋敷のある反面、スラム街では貧しい人たちが苦しみながら生きている。
俺達は今、依頼の目的地である貴族の屋敷の塀の外に立っていた。
「今回の依頼は、このゲリュウ伯爵の屋敷に忍び込み、依頼人の母の形見である世界最大のイエローダイヤ『黄金の太陽』を取り返し、依頼人に届けることです」
青いローブに着替えたウルスラが手元の資料を見て俺にそう告げる。
「分かってる。ゲリュウ伯爵ってのは嫌な噂の絶えねぇやつだ。ついでにその証拠も盗ってくればやつは失墜し、『黄金の太陽』を取り戻せるほどの権力も無くなるだろうよ……」
俺は高い塀を見上げ、ため息をつく。
正直、こんな仕事はいつものことで、過去に何度も成功させている。
「では、今回も裏口の警備を麻酔で眠らせ、注意が裏口に集中しているうちに屋上から中庭に侵入する、ということでよろしいでしょうか?」
「まぁ、状況によって多少の手筈は変わるだろうが、それでいいだろう。もしもの時はこの眼もあるしな」
俺は自分の目を指差しながらウルスラを見る。
「なら、安心ですね」
「いつものことだろう?んじゃ、頼む!」
俺はウルスラと顔を合わせて頷きあうと、助走をつけ、壁に向けて飛び上がった。
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