1章~影の仕事屋~

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俺が下を見ると、中庭には休憩中だったと思われる10人程の守衛が慌ただしく動き回っていた。 守衛は予想より多いが、まぁ問題はないだろう。 俺は腰から二丁の拳銃を取り出して構えると、着地点の近くにいた二人の守衛に麻酔弾を撃つ。 その弾は二人の胸を撃ち抜き、二人は胸から赤いものを飛び散らせながらその場に倒れた。 俺とウルスラの麻酔弾は通常の物とは違い、被弾者の心臓への着弾と共に炸裂し、血と見紛うような血糊を噴出させ、血糊に含まれた仮死状態を引き起こす強力な薬品を被弾者の血液中に溶け込ませる、言い換えれば『仮死弾』とでも言えるものだ。 「て、敵襲だ!ゲリュウ様に報告を……」 守衛の一人が声をあげ、屋敷に入ろうと扉に手を掛けたその時、屋根の上から一発の銃声が聞こえ、その弾を食らった守衛がその場に倒れた。 「流石だな……ウルスラ……」 俺はそう呟きつつ、他の守衛二人に向けて仮死弾を撃ち、続けて二人、また二人と守衛を仮死状態にしていく。 二、三人が屋敷の中に逃げ込もうとしたが、屋根の上からの砲撃に全員が仮死状態にされた。 「レイアスさん、大丈夫ですか?」 屋根の上からウルスラが降りてきて俺のそばにくると、ローブの中にスナイパーライフルをしまった。 「あぁ。ウルスラもいつもの通り、正確な狙撃だったな」 俺はウルスラの頭に手を置くと、周囲を見回した。 ウルスラは裏社会でもトップクラスの狙撃手で『千里眼』とも呼ばれている。 「さて、『黄金の太陽』はどこにあるか分かるか?」 「ゲリュウは自らのコレクションを自分の部屋に置きます。なので、多分執務室にあるかと……」 ウルスラは冷静に分析して俺にそう答えた。 「んじゃ、行くぞ!」 「は、はい!」 俺とウルスラは頷きあうと、一気に屋敷の中に突入した。
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