一振り「侍、剣を抜く」

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翌日。 三限目、古典。 「じゃあここの文を的場君読んでくれる?」 山文は起立し、古典の教科書を持ち音読し始めた。 「春は、あけぼのでござる。やうやう白くなりゆく山ぎは 少し明かりて紫だちたる雲の細くたなびきたるござる。夏は―――」 山文は枕草子にござるをつけて読み終えた。 「まとバカ、やっぱりお前はまごうことなきバカだ」 古典が終わり、4限が始まるまでの休み時間、桜は山文に話し掛ける。 「失礼でござる。ソメイが教えてくれたアイデアだろでござる」 「いや悪かったって思ってる。だからそれはやめた方がいい。更に友達が作れなくなるよ」 「ソメイそれは間違ってるでござる。友達は作るものでなく、築くものでござる」 「普通に聞けば、まとバカの台詞で唯一いい台詞だったのに語尾のせいで台無しだよ」 「そう言うなでござる。立派な侍になりたい俺の気持ちを土足で踏みにじらないで欲しいでござる」 「……なんかいろいろと悪かったな。応援してるよ。立派な侍になれよ」 この時、桜は的場 山文の更正を諦めた。 「さすがソメイでござる。分かってくれるのはお前だけでござるな」  
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