死んだ魂

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弦兵衛は小さな頃の夢を見ていた。 その頃は、大きな戦があまりなかった。 小さな小競り合い、土地や金を巡って争っていた位だった。 父は小さな武家から、有名な武家になろうと頑張っていた。 忠義や礼儀を重んじる我が家「成瀬家」は、父母と兄一人と自分、そして妹がいた。 兄・蔵之介は、我が家の縁の下の力持ちのような存在で、頼りになる優しい兄だった。 父・弦右衛門は優しいが、ここぞという時の厳しく激しい様は、いつも見ている自分でさえ、目を疑う。 母・琴は、穏やかで古風な母だった。優しく包み込んでくれたあの温かさが、懐かしい。
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