交渉

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「ねぇ、お願いだからさぁ…」 ガバッ。 布擦れの音と共にのしかかる重圧。 虎徹のリードが一気に引っ張られた。 「抱き着くな!」 今度はスキンシップ作戦か。 お前は何処のアメリカ人だよ。 自分よりも一回り図体の大きな青年に抱き着かれても、誰も良い気はしない。 寧ろ暑苦しいだけである。魅龍に"そういう"趣味は無い。 しかも総司は筋肉質なので、締め付けられたかの様な息苦しさを覚える。 「離せっ!!殺す気か!?」 「嫌だ、君が"良いよ"って言わなきゃ離さない」 「…ッチ、結局それかよ! 図々しいなお前!!」 総司は魅龍の後から首に手を回し、彼の肩の上に顎を乗せる様な体勢になっていた。 そんな中、魅龍は総司から逃れようと必死でもがく。 傍目から見たら、ただの仲の良い友人同士のスキンシップにも…見えなくはない。 ただ、夏の薄暗い夜道でこの様なやり取りを繰り広げる二人は、どう考えても異様であった。 目撃者が居たら、間違いなく警察に通報されているだろう。 結局、この攻防戦で、最初に音を上げたのは魅龍だった。 「あーもう!解ったから、解ったから離せっ!!」 戦闘時間、およそ1分30秒。 カップラーメンは作れない。 「言ったね?」 ニヤリと笑って魅龍がギブアップ宣言をしたことを確認すると、総司はあっさりと腕を離した。
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